気温が低くなり根からの水分吸収が少なくなると、広葉樹は葉柄の
付け根の外側からコルク質の膜「離層」を作り始める。 それによって光合成で作られたでんぷんは、枝に送られず葉に溜まり、
徐々に分解されて糖になる。
一方、葉緑素は老化してアミノ酸となる。
この糖とアミノ酸が赤い色素のアントシアンや茶色のフロバフェンに
合成され紅葉が生じる。
糖ができることや、葉緑素の老化は同じでも、色素が合成されない
木では、それまで目立たなかったカロチノイドの色が表に出てくる
ことで、葉は黄色く色づいて見える。やがて離層は中心まで進んで
落葉を迎えるが、その痕はコルク質に守られて雨や雪にも腐らない。
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どんなに背の高い木でも、水分をすみずみまで行き渡らせることが出来るのは、根が吸収によって生ずる浸透圧で土の水分を取り入れ、
葉が細胞の濃度を変化させて水分を外へ蒸散するという両方の働き があるため。 この二つによって、木の中の水の流れが生み出されて
いる。 葉を落とすことは、その流れも積極的に休息に入ることなの だろう。
紅葉は、古くは「黄葉」と書いていた。
色づくことを表す自動詞が「もみつ」、その名詞が「もみち」だった。
日本の野山には、黄・褐色系に色づく樹木も多く、『万葉集』での
「もみち」は、ほとんど全部が黄葉に由来している。
紅葉は『源氏物語』の頃から定着したものらしく、赤い葉に心寄せる
ようになったのも人の感覚の変化なのかも知れない。 |