北アルプスの南端、長野県南安曇郡安曇村と岐阜県大野郡丹生川村の県境に、その昔魔の山として崇められた乗鞍岳は、たおやかで優美な姿を横たえていた。
約100万年前、新生代の第4紀、火山活動が活発だった時代に誕生したといわれ、山名は、そのなだらかな姿が馬の鞍に似ていることからの命名らしい。
火口湖が点在するコニーデ型火山で、古い火口の上に新しい噴火口がある複式火山である。「乗鞍23峰」といわれるように、大日岳、摩利支天岳、朝日岳など23の峰と7湖、8カ所の平原がある。
最高峰は3,026メートルの剣ヶ峰で、日本の火山としては富士山、御嶽山に次いで3番目の高峰になる。
北の穂高連峰と、南の御嶽山とのほぼ中間に位置し孤高を誇っているため、展望も格別で大パノラマが広がっている。 山頂からは北アルプスをはじめ、南アルプス、中央アルプス、八ヶ岳、白山などの素晴らしい眺望がある。
山頂付近には、コロナ観測所、国立天文台、東大宇宙線研究所などが設置されており、気軽に2,700m.まで車で来られることから、アマチュア天文家の観測場所としても人気が高い。
高山植物が豊富なことでも有名だが、ダケカンバやナナカマドなど秋の紅葉にも目を見張るものがあった。
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岐阜県側の日本一高所を走る有料道路「乗鞍スカイライン」の年間利用台数は、21万2000台で、そのうちマイカーが95%の20万2000台に上るという。一方、長野県側の県道「乗鞍エコーライン」は標高2700メートルを走れる無料の山岳道路であるため、さらにその通行台数は圧倒的に多いかもしれない。
マイカー規制の話は、岐阜県側から出たようだ。「有料の乗鞍スカイラインが償還を終えて無料になる2003年6月末からの通行量の増大には計り知れないものがある。自動車などの排ガスの影響や一部マナーの悪い観光客による自然破壊が進み、さらに深刻化する。」そんな訳で自然環境保護の観点からのマイカー規制となるらしい。
中部地方では、長野県の上高地公園線、富山県の富山立山公園線、静岡県の富士山スカイラインで、すでにシャトルバスの運行などによってマイカーを規制している。
現在運行されている乗合バスの乗鞍岳山頂到着は朝9時頃と言うから、畳平付近の山小屋などに泊まらなければ、来年以降気軽にご来光を拝むことは出来なくなるかもしれない。
乗鞍岳へのマイカー登山の最後となる今回の旅は、雲ひとつない秋晴れに恵まれ、大感動の光景に出会えた。
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