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御  嶽

お ん た け

 

御嶽山の落日 
(撮影 2001.7.20)








 三笠山より朝の御嶽山を望む 

 2年ほど前、木曽福島町と開田村の境にある地蔵峠から、日本百名山に数えられる御嶽山を数時間に渡りボ〜ッと眺めていたことがある。
 足元に広がる開田高原の向こうにどっしりとした山容を横たえた御嶽山の雄大さに、しばし時を忘れて見とれてしまったのだ。

 その山懐に入り、少しでも悠久の大自然に近づきたいとの思いから今回の旅が始まった。


 とはいうものの、頂上を極める登山をしようと思ったわけではない。
 いつものように、四駆で行ける所まで登って、一時間ほど歩き眺めの良いところから写真を撮ったり、お茶したりの旅である。
 地図を見る限り結構高いところまで車で登れそうだ。たいした下調べもしないまま出かけたのであるが、王滝登山口の田ノ原駐車場までたどり着いた。 2千メートルはゆうに超えている。





御嶽山

 御嶽山は、標高3,067m、日本では14番目の高山だ。今なお山頂に蒸気が噴出しいるコニーデ型火山で信仰登山の霊山として全国に知られている。

 その歴史をさかのぼると、西暦774年、信濃守石川望足が大巳貴命・少彦名命の二神をまつり、疫病の蔓延を防ぐことを祈願した。それ以来、修験者の道場として栄え、さらに優れた行者らの活躍によって集団登山「御嶽登拝」が全国に広まった。


 1894年、上高地の開山で有名なW・ウェストンも登頂し、これを期に一般の登山者が増え始め、今日では家族連れや初心者で毎年賑わいを見せている。
山頂五湖めぐりやお花畑コースなど特に夏山登山が楽しめる。
 
 聖なる山の峰々にこだまする山霊への祈り、忘れかけていた大自然の神秘がよみがえる。








荒々しい山肌を見せる王滝頂上付近


 木曽の御嶽山といえば、木曽節の「♪ 木曽のな〜 なかのりさん、木曽のおんたけさんはなんじゃらほい ・・・」という一節がまず頭に浮かぶ。「なかのりさん」ってなんだ?「なんじゃらほい」ってなんだ?どんどん頭の中がそのことで一杯になってきた。

 「なかのりさん」には、三つの説があるが、一般的な通説では木曾川で木材を運搬する際、組んだ小さな筏(いかだ)の先頭に乗る人を「舳(へ)乗り」、


後ろを「艫(とも)乗り」といい、真ん中に乗った人を「中(なか)乗り」といったということで、木曽川の筏師の「中乗りさん」らしい。

 「なんじゃらほい」には、「なんじゃやらホイ」の掛け声のつまったものという説と、「ナムチャラホイ」つまり梵語で盆踊りの意味という説がある。
  正調「木曽節」では、「なむちゃらほい」となっている。





1984年(噴火の5年後)の長野県西部地震で発生した伝上崩壊
 田ノ原駐車場に到着した頃は、すでに夕刻になっていた。
 真夏の灼熱の太陽が大分傾きかけ、日差しが弱まってきた。 
 夕焼けの写真を撮り逃すまいと、急いで撮影の準備をして夢中でシャッターを切った。
 しかし、太陽は容赦なく、そしてあっという間に御嶽山の裏側に沈み込んでいった。

 気がつくとすでに夜の帳が降りはじめていた。あたりが闇に包まれていく頃には、駐車場にいた車も数えるほどになっていた。
 広々とした駐車スペースを贅沢に使って夕飯の支度をはじめる。支度といってもレトルトのカレーとご飯を湯煎して温めるだけだが・・・。
  熱い(VeryHot)カレーライスを口にほうばる。それにしてもグリコの20倍は結構辛い。
 


 




左から茶臼山、将基頭山、木曾駒ケ岳、宝剣岳、三沢岳  

 コーヒーを淹れるためのお湯を沸かしながら、何気なく夜空を見上げると、ひらけた空間に所狭しと満天のきらめく星たちが乱舞していた。
  ランプの火を落とす。 ___ 素晴らしい・・・
おっ!
流れ星だ。天の川も良く見える。
 
  これだから「時速20キロの旅」はやめられない。

 

 コーヒーを飲み終えると、手早くウヰスキーの水割りをつくる。グラスの中の氷が踊る音を楽しみながらチビチビ飲る。つまみは柿の種スティック、歯ごたえと唐辛子の辛さがたまらなくいい。星空を眺めるとき、BGMのはじまりはいつもキースジャレットの♪ケルン・コンサートだ。

 あ゛〜〜ッ 至福の時空間・・・・・・。




雲上の別世界 正面は中央アルプスの山々  

 翌朝、目を覚ますと昨夜ガラガラだった駐車場が全く空きが無いほど車で一杯になっていた。乗用車に加え観光バスや右翼の街宣車まで停まっている。
 
 空きを探して走り回る車があれば、登山準備をしている人、私の車の横をぞろぞろと登山口に向かう人など、昨夜の静けさと荘厳な雰囲気とは程遠い雑然とした状況となっていた。





 今朝はチョッと寝坊してしまった。その寝ぼけ眼でデジカメ片手に周辺散策に出かける。道端で朝食をとっている老夫婦がいる。トイレに並ぶ人がいる。もうすでに登山道は長蛇の列をなしていた。

 駐車場の奥まったところに登山道とはほぼ逆方向の三笠山に登っていく小径がある。たいした期待もせずに歩を進める。坂を登りかけ、左に視線を移したその瞬間、眼下にその素晴らしい光景は静かに広がっていた。
 



 
左手に乗鞍岳、正面に南アルプス、八ヶ岳を雲海上に遠望する

 逆光にきらめく雲海の向こうに、日本を代表する山々が連なりシルエットとなって浮かび上がっている。
 左に乗鞍岳、遠く北アルプス、八ヶ岳、南アルプス、直前に木曽駒ケ岳を頂点とする中央アルプスの雄姿だ。


 突然、雲上人になったような気分になる。まさに別世界という風景がそこにあった。逆光によるまぶしささえも、厳粛なる自然の偉大さと奥深さをさらに強調する演出をしているかのようだ。



 今日に限って何で朝寝坊をしてしまったのか。昨夜、遅くまで星たちとの対話集会に参加していたのがあだになったか。
 星と太陽は仲が悪いのか?などと馬鹿げたことを考える。

 いつものように夜明け前に目覚めていれば、この風景に加えて神々しいご来光が拝めたのに・・・。悔やんでも悔やみきれない。 あ〜残念、残念、残念・・・・。


 




御岳スキー場にて

 御嶽山では、何年かに一度、神隠しのような遭難が発生している。
 一緒に下りてきたはずなのにいつの間にか行方不明となってしまい、現在も見つかっていない人もいるそうだ。   道は1本しかないし、迷いやすいところにはロープが張ってあるのだが、一体どこへ行ってしまうのか不思議だ。
 活火山の影響はほとんどないにしても、決して3千メートル級の山岳を侮ってはいけない。




 夏の御嶽山を登っている人々の様相は他の山とは、大分変わっている。
 白装束に杖、鈴を鳴らしながら登っていく人がかなり多い。 
 御嶽教(おんたけきょう)の信者が9割、一般の登山客は1割と言っても決して過言ではないと思われる。
 そして、登山者の年令層が極めて高いというのも特徴のひとつだ。 現に行き交う人たちは、高齢者ばかり、若い人の割合も1割に満たない感じだ。




 
乗鞍岳を遠望する

 御嶽山は、北アルプスの山岳に比べて、危険な箇所は少ない。
 しかし、登山道での浮き石や石ぐるま等による転倒事故が多いという。やはり、登山者の多くが高齢であり、バランス感覚などが鈍くなった人が多いためかもしれない。

 六根清浄(ろっこんしょうじょう)」と唱えながら登っていくおばさん達がいた。


 大辞林によると、六根清浄とは、【六根の執着を断ち、清浄な精神を所有し霊妙な術を習得すること。
 山参りの修行者や 登山者などの唱えることば】とある。
 六根とは「感覚や意識をつかさどる六つの器官とその能力、すなわち@眼根(げんこん)、A耳根(にこん)、B鼻根、C舌根、D身根、E意根 の総称、六つの根。 という意味だそうだ。
 
 
 



落 日

 田の原駐車場から王滝登山道を行くと、頂上奥社遥拝所まで500m程は、平坦な広い道を歩く。
 遥拝所は、頂上までお参りに行けない人がここでお参りをするそうだ。
 実は私もそのうちの一人だが・・・。行き交う人の多くが御嶽教の信者である。山登りをする人はすれ違うときに「こんにちは」と声をかけるのが普通だが、ここでは、「ごくろうさんです」が挨拶である。やっぱり、信仰の山なんだな〜。
 

 このあとにどうしても訪れたいところがあるので、今回はここまでしか登らなかったが、来年の夏は頂上征服を目指したいと思う。
 直線的に登っていく登山道なので私にとっては厳しい山行きになるかもしれないが、かなりの年配者が登っていくのを見たので、まっ、大丈夫かな・・・?と思っている。


<撮影  2001年 7月20日>  地図
♪“Moon”   Music by Cygnus  ・




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