富山県、砺波平野(トナミヘイヤ)。米どころ富山を支える稲作地帯だ。
まるで瀬戸内の小島が海に浮かんでいるような不思議な光景が眼下に広がる。
一軒一軒が点在しているこの地帯を人々は散居村と呼んで親しんできた。
島の様に見えるのはカイニョと呼ばれる屋敷林だ。
カイニョとは、農家を垣のように取り巻く樹木林で、漢字では「垣饒(カキニョウ)」。これがなまり、カイニョと呼ばれるようになった。
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平野の開拓時に冬の寒さや夏の日差しを避けるため、原生林の一部を屋敷林として残したのが起源と考えられている。
一年を通して強い南西の風が吹き続ける砺波平野。
カイニョが、風雨や吹雪から家や蔵を守り、家族同様の存在として寄り添ってきた。
未だ雪深き医王山(イオウゼン)。雪解けが始まったまだら模様の水田。西に傾き始めた夕日が、砺波平野の田園風景を次第に赤く染めていく。
散居村の落ち着いたその佇まいは、いつもと変わらぬ夕暮れ時を、今日も静かに迎えていた。
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