これからは下りだから楽勝だ、と思った。
だが、案の定ひざがワラってる。浮石で足首をくじかないようにと足元に気を遣いながら、ひたすら歩く・・・。歩く・・・。歩く・・・。《・・・。は休憩》
疲労に加え、空腹と日差しの強さに頭がボぉーとしてきた。 突然、目の前が真っ白になり、気が遠くなったような気がした。辺りに人影も見えない。危ない!
山の天気は本当に気まぐれだ。朝方からずーといい天気だったのに急に日本海から山肌にそって白いガスが昇ってきて視界が全く利かなくなったようだ。
いくら歩いても、ちっとも前に進んでいるとは思えない。同じ場所で足踏みしているだけのようだ。時間的感覚が失われていく。
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いつまで歩きつづければ終わりが来るのだろうか・・・。
突然鳴った携帯電話の音で、朦朧とした世界から我に返った。 会社からだった。
受話器の向こうで女性事務員が無機質な声で、顧客からのクレームについて淡々と話している。夏休みの東北の山中でこの風景を眺めながら仕事の電話をしている光景は、なんとも不可思議な時空間と言えるかもしれない。
それにしても暑さは増す一方だ。のどはカラからなのにペットボトルのお茶は底をついている。車に戻って冷蔵庫の中にある凍らしたみかんの缶詰を口にしてこのからだのほてりが癒されていくことを想像しながら・・・・また、歩き出した。 |